アフリカのミネラルハーブは若さの味方〜ルイボス

ルイボス Rooibos

ルイボスは南アフリカの一部でしか自生しない珍しいハーブでミネラル補給に適した発酵茶です。

学名: Aspalathus linearis (アスパラサス・リネアリス)
和名・別名:ブッシュティー
科名:マメ科
使用部位:葉茎部


leaf3_mini 植物分類と歴史

ルイボスは、マメ科に属する針葉樹で高さ2メートル程に育つ潅木(かんぼく:成長しても樹高が約3mまでの木のこと)です。
原産地は南アフリカ共和国ケープ州ケープタウンから北に250kmに広がるセダルバーグ山脈の中腹、標高300~600mの一帯のみに自生する珍しい植物です。
夏(11~12月)に花は満開になり、細い枝に明るい黄色の花が咲き、その小さな花にひとつずつ、小さな小さな種子がつく。この地域は年間平均降雨量が250mm程度といわれ、降雨量の少ない乾燥地帯で、赤茶けた岩場の土壌で他の植物と混在して生育しています。


セダルバーグ山脈中腹とルイボスの木と花葉は鮮やかな緑色の針状で、葉の長さは15~60mm、厚さは0.4~1mmほどです。お茶の材料になるのは、葉と茎の部分です。

この山脈の一帯は昼夜の温度差が平均20℃以上である上に、やせてミネラル分の少ない土質であるにもかかわらず、ルイボスはミネラル豊富なハーブとして知られます。その理由は高さ1~1.5メートルほどの茎に対して、なんと4~10メートルにものびるという根にあります。

 
ルイボスの苗の根と土壌

古代の海底が隆起し、水はけが良く浜辺の砂のような白い土中に深々と根を下ろし、地中深くにある岩盤に蓄えられた貴重な水分やミネラルなどの栄養分を吸い上げています。
この吸い上げた水分の蒸散を防ぐために針状の葉になったものと思われます。
ルイボスは現地の言葉であるアフリカーンス語のルイ「赤い」、ボス「やぶ、灌木」で、学名のAspalathusはギリシャ語で「マメ科の植物」、linearisは「線でできた」を意味します。葉の形から来ているのでしょう。

●ルイボスの歴史

数千年以上の歴史を持つハーブにおいて、ルイボスの歴史は300年ほどなのであまり文献等も多く存在していません。
南アフリカの先住民族コイサン族やバンツー族が「赤い藪の奇跡」と呼び、初めて飲んだとされます。彼らはルイボスの抽出液を強壮剤として用いるため、葉を収穫し、昔ながらの器具で砕いてそれを積み上げて発酵させ、天日で乾燥していました。また食料の乏しいブッシュでは、空腹を満たす栄養補給源として、お湯を加えて飲むようになっていきました。

ルイボスがヨーロッパに知られるようになったのは、1772年にスウェーデンの植物学者カール・ハンベルクがコイサン族の習慣を発見し、欧州の植民地開拓者たちに伝えたことが始まりとされます。
のちにケープタウンを中心にルイボスティーが飲まれるようになりました。商業的な利用が本格的になるのは、ヨーロッパで製茶産業に関わる家系出身のベンジャミン・ギンズバーグが、1904年に乾燥させた葉を「山のお茶」として販売、輸出することを始めます。
のちの戦時下ではセイロン茶が品薄だったことからルイボスの需要は伸び、1930年までには、地元の医師でアマチュア植物研究者であったP・ル・フラス・ノルキヤー博士がルイボスの種を発芽させる方法を発見し、商業農家と共に新しい栽培方法を開発したことで、セダルバーグ山脈のスロープに沿って広がっていきました、非常に大規模なルイボス生産農場が生まれていくのです。
さらに1954年には、マーケティングを規制し、品質管理を向上するためのルイボス管理公社が設立され、この公社は1993年に民営化されるまで続きます。

日本でルイボスが知られるようになったのは 1985 年以降で歴史は浅いです。
現在南アフリカ共和国は年間平均生産量約1万4,000トンのうち約8,000トンが国内で消費され、約6,000トンが輸出されています。主要輸出相手国は、ドイツ、オランダ、日本、英国、米国です。(2017 JETRO)


leaf3_mini 安全性と相互作用

安全性:未収載
相互作用:未収載
(Botanical Safety Handbook 2nd edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

ルイボスティーは南アフリカではカフェで必ずみられるメニューで、ミルクティーとして飲用するのが好まれている。やはりイギリス文化の影響だろう。
数あるハーブティーが無加工茶であるのに対して、このルイボスは日本に入って来た当初から、数少ない加工茶の一つだ。

白茶、黄色、緑茶、烏龍茶、紅茶、黒茶といった中国を発祥の6大茶は、カメリア・シネンシスから作られるが、1000種類以上にもおよぶこれらのお茶は、人の手によって、炒ったり、蒸したりして、旨みや香りを重視して作られる。
これらを加工茶という。かたやハーブティーは、そのほとんどが収穫後、加工を一切せず、乾燥させただけのお茶なので、無加工茶と呼ばれる。
ルイボスは南アフリカのハーブで、かつてのイギリス領ということもあり、最初から紅茶同様、加工することが自然と行われていったのかもしれない。
加えて、ルイボスは自然発酵が進みやすいハーブであることも、加工しやすい条件にあったのかもしれない。そのこともあってか、日本に入ってくるおそらく90%以上のルイボスティーは植物防疫の観点から高圧蒸気殺菌処理をされているため、発酵したルイボスが主流となっている。

しかし、この数年前から発酵前のルイボス(非発酵型ルイボス)のほうがミネラルや有効成分などが変質しづらいということから、医療的活用の多いハーブの特性上、人工的に発酵させないルイボスが注目され、現在では、発酵したものを「レッドルイボス」、発酵が進んでいないものを「グリーンルイボス」として区別して販売されるようになった。


グリーンルイボス(左)とレッドルイボス(右)

*レッド(発酵)ルイボスティーの特徴
・グリーンと比べると味わい・香りともに濃厚(発酵色と発酵香を楽しめる)
・大量に出回り身近で手に入りやすく、比較的安価
*グリーン(未発酵)ルイボスティーの特徴
・抗酸化作用のある成分がレッドと比較して豊富
・香りにくせがなく、さっぱりしている。

ハーブらしい風味 ・自然発酵しないよう管理するためレッドよりも高価 紅茶の風味を楽しみたければ、レッドルイボスが適しているし、成分を少しでも植物の状態で摂取したい場合はグリーンルイボスと区別して利用すると良いでしょう。

●ルイボスの加工法

ルイボスは種子をまいて2年目から約5年間収穫できます。初冬、冷たい雨が大地を潤し、植物が成長するために充分な湿り気を与え、熱い夏を越えると収穫時期となります。三日月形のシッケル(鎌のようなもの)を使い、1株ずつ手で刈り取ります。機械で刈り取る畑も多いようだが「自分は手にこだわる」という農家も多いようです。株には勢いがあり、たとえて言えばホウキ草のようです。

 
ルイボスの収穫模様

収穫した枝はその場で束ねられ、加工場にトラックで運ばれます。この時点からすでに赤くなり始めます。刈り取られたルイボスの枝は機械で細かくカットされ、水をかけて24時間発酵させます。巨大なスポンジケーキを作るように押し固め、乾いたら崩し、葉をやさしく傷つけて、さらに発酵を進めます。
この過程で葉の色は緑からその名の通りのマホガニーレッド(発酵色)と独特な香り(発酵香)に変わり、炎天下で丸1日乾燥させた後、袋詰めされます。
発酵した葉を専用の長い木の棒を使い、円を描くように薄く広げ乾燥させます。

乾燥風景と大規模農場


●ルイボスの機能性

ルイボスには強力な抗酸化力を持つ、ケルセチンアスパラチンなどのフラボノイドが含まれており、また主要なミネラル類も豊富に含んでいる。そのため抗酸化ハーブであるだけではなく、ミネラル補給にも最適の栄養価の高いハーブでもある。特にアフリカ大陸の南部は古代の地層からなっていることは地質学上よく知られる。ルイボスはこの地層から人間の身体に必要なカルシウム、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、マンガン、リン、フッ素、ルビジウムなどのミネラルを吸収し、葉・茎にたっぷりと蓄えている。ルイボスに含まれているナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは人間の体液を組成している比率と似ているため、体に馴染みやすく全身の細胞を活性化させ、生体機能の維持に有用とも言える。

原始の海、海水、ヒト体液、ルイボスティーのミネラル組成比率


*ナトリウムを100としたミネラル含有比率「大地の恵みルイボスティー」中野昌俊(東洋医学舎)より

一般的に知られる主なルイボスの効果を整理すると以下の通りである。

●抗酸化作用

ルイボスの持つ強力な抗酸化作用には、特有のアスパラチンが動脈硬化や高脂血症、といった生活習慣病全般や糖尿病の予防効果があるという研究報告がいくつか出されている。
国内でも順天堂大学医学部で行われた研究で、ラット実験レベルでルイボスティーを投与したラットは、非投与群に比べて活性酸素抑制酵素(SOD)が有意に高値を示したとの報告があり、活性酸素による「酸化ストレス」の低減に役立つと考えられる。
また血圧上昇酵素アンジオテンシン変換酵素(ACE)のはたらきを抑制することによる血圧低下作用も報告されており、高血圧予防効果も期待されている。
特に非発酵型ルイボスにはレッドルイボスよりもアスパラチンが豊富に含有していることがわかっている。

アスパラチン

アスパラチンの吸収性と生体利用性は十分明らかになっていないものの、アスパラチンには抗酸化作用に加えて、キサンチンオキシダーゼ阻害作用*1、糖取込促進作用*2といった生理作用も報告されている。

*1尿酸は体内で核酸からプリン体、ヒポキサンチン、さらにキサンチンを経て生成される過程のうちヒポキサンチンから尿酸への代謝に重要な役目をするのがキサンチンオキシダーゼ(XOR)という酵素(キサンチン酸化還元酵素)で、それを阻害することで尿酸の生成を抑制できる。
*2骨格筋と肝臓において効率良くグルコースを取り込めるようにすることが、血糖コントロールを良くする方法のひとつになる。

 
●「Tie2(タイツー)」活性化によるゴースト血管予防

内皮細胞内の受容体型チロシンキナーゼの一種である、内皮細胞内の受容体型チロシンキナーゼの一種であるTie2の活性化は、内皮細胞と壁細胞、内皮細胞同士の結びつきを強め、血管やリンパ管の漏れを抑制することが明らかとなっている。このゴースト血管と呼ばれる毛細血管の消失現象メディアでも取り上げられる機会が増えている。
この現象は美容だけでなく、脳の健康にも関わり、毛細血管のゴースト化と脳血管障害との関連、脳の毛細血管のゴースト化が認知症に及ぼし得る影響などが注目されている。

●アトピー性皮膚炎を改善する効果

ルイボスにはアレルギー性の皮膚炎を抑制する効果もあるといわれており、アトピー性皮膚炎の患者に、1日あたりルイボスの葉15gに相当する抽出物を経口投与した結果、重症のアトピー性皮膚炎患者の約半数に症状の改善が見受けられたと報告されている。
さらに別の研究ではアトピー性皮膚炎やかゆみを伴う皮膚炎、ニキビなど様々な皮膚疾患の患者をルイボスのティーバッグを入れた風呂に入浴させた所、大半の症状が改善されたという報告もある。
これらは 含有するケルセチンヒスタミンの作用を抑えるからと考えられている。ルイボスティーをスプレー等で噴霧しても同様の効果が期待できる。よく植物療法では利用される処方である。このルイボスのスプレーは化粧水としても販売されているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないだろう。

また昨今は、レッドルイボスと別に学術的研究として、グリーンルイボスを使ったいくつかの報告があるので紹介しておく。

●グリーンルイボスの優位性

*グリーンルイボス摂取と運動の組合せによる HbA1c 上昇抑制効果
2型糖尿病モデルマウスを用いた、毎日1時間の遊泳運動、グリーンルイボスエキスの摂取、およびその組み合わせが血糖値に及ぼす報告がある。
その結果、空腹時血糖値には影響は見られなかったが、HbAlcは運動とグリーンルイボスエキスの摂取を組み合わせることで最も低値となった。

*グリーンルイボス摂取による激運動時の抗酸化力上昇作用
健常成人男性10名に対してグリーンルイボスエキス520mgの摂取60分後に30 秒間の全力自転車運動を実施し、運動3分後、および30分後に血液の抗酸化活性を測定した結果、プラセボ群では抗酸化活性は運動3分後に有意に上昇し、30分後には運動前と同レベルまで戻っていたが、グリーンルイボスエキス群では運動3分後、30分後いずれにおいても抗酸化活性が高いレベルを保っ ていた。
グリーンルイボスエキスのこれらの効果はアスパラチンによるものであることが想定される。
・Nakamichi Watanabe, Yurie Hara, Satomi Sakuda, Yoriko Mori, Yutaka Furuya, Tsuyoshi Watanabe, Effects of dietary green rooibos on physical endurance in swimming mice, Food and Nutrition Sciences, 5, 127-131 (2014) ・Nagasawa Takeshi, Murakami Kaori, Effects of unfermented rooibos ingestion on anti-oxidant potential during high intensity exercise in human, Trace Nutrients research, 34, 74-77 (2017)

また最近の興味深い報告として、ルイボスが抑うつの改善に効果があるのではという研究報告も出されている。
*ルイボスが自律神経機能に与える影響
ルイボスティー摂取による自律神経への作用とストレス緩和効果についての報告がある。大阪青山大学健康科学部の研究報告では、ルイボスティーでは「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「疲労」「混乱」の領域で気分が有意に改善されていたという。
特に「悲しい」「自分は褒められるに値しないと感じる」「がっかりしてやる気をなくす」「孤独でさびしい」「気持ちが沈んで暗い」という抑うつな気分に対する効果が認められた。という報告がなされた。

今後の更なる研究に期待したいところだ。 ルイボスは、当初発酵されたレッドルイボスが市場を賑わし、今でもその主流は変わらないが、植物療法を推進する立場としては、ハーブ本来の成分を最大限活かせるグリーンルイボスの価値をもっと訴求していけたらと思うのである。

(文責 株式会社ホリスティックハーブ研究所)


NEW 最新研究報告

*グリーンルイボスの運動時に生じる活性酸素の抑制(追加)

畿央大学と広島工業大学が2018年に発表した同研究結果
参照 http://www.jtnrs.com/sym34/O-74.pdf

短時間の高強度運動のような激しい運動は、活性酸素を過剰に生成して酸化ストレスを上昇させる。このとき運動後の酸素摂取量は増大し、運動中、ATPは急激に消費される。これにより筋細胞内のAMPが蓄積し、キサンチンオキシダーゼが活性化することで活性酸素が過剰に産生され、こうした酸化ストレスの増大がDNA損傷や過酸化脂質の生成につながる。

発酵していないルイボス(グリーンルイボス)は、アスパラチンやルチン、ケルセチンなどフラボノイドを含有する。アスパラチンを多く含有するため、アスパラチンの機能性である抗酸化、キサンチンオキシダーゼ阻害および糖取り込み促進などの生理作用が同様に期待されている。
近年の研究では、運動前に摂取することで運動時の生体内抗酸化力が上昇することが分かってきた。

ヒト試験では、低強度の歩行運動前にグリーンルイボスティーを飲用することで、酸化ストレス指標の尿中8-0HdGの生成が抑制することも確認済み。
今回、健常男性10名を対象に無作為化クロスオーバー法で二重盲検プラセボ対照試験を行い、グリーンルイボス摂取とプラセボ摂取の2条件を実施。
摂取60分後に30秒間の全力自転車運動を2回実施し、運動終了3分後、30分後に採血し、安静時血液の抗酸化力(BAP)、血漿中ヒドロペルオキシド濃度(d-ROMs)を測定したところ、BAPはグリーンルイボス摂取で運動3分後に有意な上昇を認め、30分後には安静時より有意に上昇した。


 

 

【参考文献】
「アフリカの”お茶”ルイボスティー」前田 浩著
「健康・機能性食品の基原植物事典」佐竹元吉ほか著
「メディカルハーブの辞典」 林真一郎編集
「The Green Pharmacy」 James A Duke著
「The complete New Herbal Richard Mabey著
「Botanical Safety Handbook」アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集  Proceedings of the National Academy of Sciences
NIH National Library of Medicine’s MedlinePlus  
ルイボスティーの薬理作用について. 日本 SOD 研究会 2008, 20-3
ルイボスティーの抗酸化性.日本食品科学工 学会誌 1999, 46, 779-85.  
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22095883  
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20833235  
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/462276  
大阪青山大学紀要 2018 11 巻 1-7. J. Osaka Aoyama University.2018

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