アーティチョーク〜肝臓の味方はちと苦いぞ!美白効果も!

アーティチョーク〜肝臓の味方はちと苦いぞ!美白効果も!

アーティチョーク Artichoke

アーティチョークの葉は肝臓の病気やお酒の飲み過ぎなどにハーブティや薬草酒(シナール)として用いられてきました。

学名:Cynara scolymus (シナラ スコルムス)

和名・別名:チョウセンアザミ

科名:キク科

使用部位:葉部・蕾・茎


leaf3_mini 植物分類と歴史

地中海沿岸原産の毎年花を咲かせる多年草で大形の草花で丈は2mを超すこともあります。主な開花期は初夏~夏で、アザミに似た紅紫色の花を咲かせ、葉っぱは深いギザギザが入り、学名の由来も属名のCynara(キナラ)はギリシャ語のcyno(犬)からきており、花の周囲の棘が犬の歯に似ていることに由来しています。ウロコのような萼(がく)が重なった若いつぼみが食用となります。つぼみと言っても大きさはソフトボール大で、萼もギターピックのようです。

葉は強い苦みをもつことで古くから知られています。お酒の飲み過ぎや肝臓の病気のときなど、これを材料にしてハーブティや薬草酒(シナール)がつくられてきました。(シナールという医薬品もあるが、全く関係ないのでご注意)シナールはアーティチョークをメインに13酒のハーブをワインベースのリキュールです。ほろ苦い風味が特徴的でアルコール度は16度ほど。イタリアでは食前酒や食後酒にもよく用いられます。肝臓ケアのハーブだけあって、二日酔いに効く酒?らしいですよ。飲み過ぎた次の日に、ソーダ割りで飲むと良いらしいので酒飲みの方はぜひ試してみてください。
 

また古代ギリシアではスタミナ源として食用にされ、3世紀頃にはすでに商業目的で栽培、チュニジアの遺跡にもアーティチョークのモザイクが残っているほどです。16世紀には、原産地の地中海から現在のイタリア、フランス、ドイツに渡りました。日本には江戸時代に伝わったとされます。花になる前の実は、イタリア料理などで使用されます。
このアーティチョークをこよなく愛し、嫁ぎ先に栽培担当者まで連れて行ったのが、メディチ家の女傑カテリーナ・ド・メディチ。イタリアルネッサンスを生み出したフィレンツェの大銀行家、泣く子も黙るメディチ家のご令嬢。彼女が1533年にフランス王アンリ2世と結婚したとき、彼女はまだ14歳でした。フランスにとっては、メディチ家の財力を狙った政略結婚であったが、のちにカトリーヌ・ド・メディシス(フランス語読み)と呼ばれるほど、フランス宮廷に君臨するようになります。

当時のフランスはただの田舎ものの国でした。かたやイタリアはヨーロッパ一の先進国にして、その中でもルネッサンス文化の産みの親であるメディチ家は、本物のセレブだったから、フランスから見れば願ってもない政略結婚だったに違いありません。セレブのイタリアから田舎の野蛮人、フランスに嫁いだ彼女は、田舎暮らしに染まるのはイヤっ!とばかりに、コックさんだの靴屋さんだの、あらゆる職人たちも一緒に連れてきたので、従者は1000人にも及んだらしいのです。当時、手掴みで食事をしていたフランス宮廷に、フォークとテーブルマナーを持ち込んだのは彼女の功績とされます。今ではフランス菓子のように思われているマカロンやシュー生地なども彼女がイタリアから持ち込み、また、ただ肉を焼いて食べるだけだったフランス宮廷で、繊細な野菜料理をふんだんに披露したり、実家では当たり前だった氷室を作って北欧から氷を運ばせ、シャーベットまで振る舞い、のちのフランス料理を作り出していきました。食べ物以外にも、ファッションリーダーとして、ヴェネツィアン・レースや日傘、ハイヒール、香水つきの手袋、東洋式の扇など、彼女が持ち込んだ小物は数知れず、マスケラ(イタリア語で「仮面」のこと)も外出時の埃よけとしてオシャレに紹介され、その後貴婦人たちの定番スタイルとなる釣鐘型の膨らんだスカート“パニエ”や女性の必需品カルソン(下着のズロースのこと)までも、彼女が初めて導入したものばかりでした。彼女はフランスに本物の文化をもたらしたと言えます。その後彼女の夫が亡くなるとフランス王妃として統治していくことになります。当時のフランスは、カソリックとプロテスタントが相争う宗教戦争の真っ只中で、内乱状態に輪をかけて、かたや旧教派の大国スペイン、かたや新教派のイギリスという、外国勢力に介入されないように難しいバランスを取りながら、国内を納めていったのです。こうして彼女は権謀術数を駆使して30年もフランスを統治していくのです。(かのノストラダムスは彼女のお抱え占星術師だったほど。)

ストレスをいっぱい抱えた中、ヨーロッパ諸国の王様達を手玉にとっていくほどの有能は指導者でもあったカトリーヌは、大の大酒飲みとしても有名でした。ヨーロッパ中を旅しては、毎夜大酒を飲み、スペイン、イギリスの猛者を相手に政治を行っていたのです。このあたりが彼女が女傑と言われる所以でもあるのでしょう。彼女が連れてきたポプランという料理人が彼女の体調を気遣って、彼女が好きだったアーティチョークの料理を作って食べさせていたといいます。それに加えて、当時野菜の種類が限られていたフランスでは、イタリアから運ばれてくる、地中海産の野菜は食材の幅を広げる一端となるのです。こうして彼女のおかげで嫁ぎ先のフランスでもこのアーティチョークは大流行することとなっていきました。


leaf3_mini 成分ほか

シナリン、苦味質(シナロピクリン)、クロロゲン酸、カフェ酸、フラボノイド配糖体(スコリモサイド)、フィトステロール(タラキサステロール)

leaf3_mini安全性と相互作用

安全性:未収載
相互作用:未収載
(Botanical Safety Handbook 2nd edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)
注意事項:キク科アレルギーの人は注意が必要です。胆管障害、胆石患者、妊娠の可能性がある場合は使用を避けましょう。
その他:シナリンの発見により肝機能の保護作用のあるハーブとして重要視され、ドイツでは消化器系強壮薬として認められています。シナロピクリンは疾病よってはアレルゲンになることがあります。


leaf3_mini 学術データ(食経験/機能性)

古代からその存在は認められているものの、イタリア半島でアーティチョークが大普及するのは15世紀に入ってからのようです。中世ヨーロッパの貴族たちは媚薬としてこぞって買い求めたといいます。亜鉛が含まれているので、精力剤だったのかもしれません。東南アジア、特にベトナムでは健康茶として葉のハーブティーの人気が高いです。食物繊維は100gあたり8.7gとゴボウの1.5倍近い量を含んでいるため、インドでは二日酔い防止に、飲酒後、お茶に混ぜて飲まれています。
食材としては、欧米では非常に身近な野菜で家庭の食卓にもよく登場します。この野菜の魅力は、食べ方の難易度の高さと、食べるところの少なさと、それを補って余りある味の良さにあります。
16世紀に生まれた人文主義者であり医師であり自然科学者であったピエトロ・アンドレア・マッティオーリ ( Pietro Andrea Mattioli ) の著述によれば、「家庭用カルドン ( Cardi domestici ) 」と言われたアーティチョークには形から大きさまで大変多くの種類があり、とげもあったりなかったり、しかしどの種類も当時からトスカーナ地方で栽培が盛んであったそうです。またアーティチョークは夜のスタミナ源と言われることがあったようです。脂肪の代謝を助けるので脂っこい料理に添えられ、特に肉料理との相性がよく、フランス料理やイタリア料理に欠かせない素材です。つぼみは、ゆでてソースをかけたり、芯の部分を焼くか炒めて食べます。ゆり根や大型の豆に似たホクホクした食感がソラマメとクリを合わせたような風味があります。かつては日本でのフキノトウのように春を告げる食材だったようでしたが、近年は一年中流通しており、下処理のいらない瓶詰めや缶詰も数多く売られています。英語でArtichokeといった場合はエルサレム・アーティチョーク(キクイモ)と混合する場合があるため、グローブ・アーティチョークと呼んで区別することもあります。
ところで、アーティチョークという名前はアラビア語で巨大なあざみを意味するアル・カルチュがスペイン語のアルカルチョーフに転訛(てんか)し、さらに各国語に変化したといわれています。和名は朝鮮あざみですが、朝鮮半島とは全く関係がなく、異国風のあざみという程度の意味でつけられたようです。日本には江戸時代オランダ人によって伝えられ「草木図説」に花床や蕚片が食べられることが記載されているが、当時は観賞用としての用途が主でした。おそらく好き嫌いのある野菜であることから、日本ではあまり普及してこなかったのでしょう。現在の日本での生産地は徳島県、長野県、九州などが主だが、生産量としては少なく市場に出回っているアーティチョークは輸入ものが一般的です。世界的な産地としてはアメリカのカリフォルニア州、ヨーロッパ南部、ニュージーランドなどで栽培されています。特にカリフォルニア州のCastroville(キャストロビル)は、アーティチョークの町と呼ばれ、アーティチョーク・フェスティバルという祭りが1948年から毎年開催されているほど。そのお祭りの中で「アーティチョーク・クイーン」なるミスコンもあり、初代クイーンはマリリン・モンローらしいです。(へぇ〜)
ハーブティーとしても苦みが強いハーブティーです。食前に飲むと良いです。フェンネルやカルダモンなどのスパイシーなハーブやスパイスとブレンドすると苦みが和らぎます。

<アーティチョークの機能性>

アーティチョークはお酒を良く飲まれる方や疲れやすい方におすすめのハーブです。
食材としてはビタミンB群(ビタミンB1,B2,B6・葉酸・ナイアシン・パント テン酸)やビタミンC・ビタミンEなどのビタミン類とカリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル類をまんべんなく含んでおり、食物繊維料も非常に多い野菜です。また葉には多くの苦味質のシナロピクリンが含まれ、肝臓ケア、酒飲みのためのハーブと言われます。またフィトステロールやシナリン、カフェ酸、キナ酸などが含まれていて、肝機能の促進やコレステロールを抑えてくれます。このシナリン(1,5ジカフェオイルキナ酸)の発見により肝機能の保護作用のあるハーブとして重要視され、ドイツでは消化器系強壮薬として認められています。イタリアでは、SULFADと言う医薬品の主成分となっています。そのほかシナリンには脂肪を分解してエネルギー代謝を促進する働きがあり、胆汁の分泌にも関与するため脂質代謝に有用です。さらに利尿作用もあり、便秘、貧血、 糖尿病を防ぐのにも役立ちます。アーティチョークティーは脂肪を分解して、動脈硬化を予防し、肝臓の解毒作用を高めてくれます。
野菜としては珍しく、炭水化物(糖質)が多く、水分が少ないという特徴があります。カロリーは100gあたり48キロカロリーと少し多めですが、たくさん食べるものではないため、糖尿病等でカロリー制限をしている人であっても気になる数値ではないといえます。
その他にもカリウムやビタミンCなどを豊富に含んでいます。アーティチョークの一番の特徴は食物繊維で100g中の食物繊維総量が9g近くあります。この数値は切干大根やかんぴょうなどの乾物を除くとトップ3に入るほどで、アーティチョークはファイバーフードとして人気の野菜でもあります。特に水溶性食物繊維が多く、排便を促したり、コレステロールや糖質を体外へ排出する働きを持つため、高脂血症や糖尿病の予防に効果的であるといえます。以下に報告されている機能性を簡単に整理して紹介します。

●肝機能向上・生活習慣病予防
葉に含まれる苦み成分のシナロピクリンは肝臓の強化に有効であり、シナリンとフラボノイドのスコリモサイドは胆汁の分泌を促進する働き・肝臓の解毒作用があるため、古くからアルコール摂取による二日酔い予防や肝臓ダメージの回復に利用されてきた。脂肪代謝を促進して血中コレルテロールや中性脂肪を減少させる働きや、脂肪合成の抑制効果も報告されており、動脈硬化、心筋梗塞などの心臓病の予防に有用とされる。

●便秘を解消する効果
水溶性の食物繊維が豊富に含まれているため、便秘の予防・解消に効果的だ。水溶性食物繊維は水分を吸収してゲル化し、摂取した食品の胃での滞留時間を長くさせる働きがあり、腸の中をゆっくり通過することによって、腸のぜん動運動を促進してくれる。(アーティチョークの食物繊維総量は100gあたり9g弱と食物繊維が豊富な野菜の代表であるゴボウの1.5倍近い量を含んでいる。)
よくアーティチョークの効果として「放屁の回数と臭いを抑える」とも言われているが、腸内環境が整うことが大きく関係しているのではないかと思われる。

●むくみや高血圧の予防
カリウム含有量も100gあたり430mgと多いため、ナトリウム濃度を下げるために溜め込んでいた水分を排泄させて、むくみを改善する効果が期待出来る。カリウムにはナトリウム(塩分)の排出を促す働きもあるため 高血圧の予防にも有用だ。またシナリンには腎機能の代謝促進作用や利尿効果が報告されており、カリウムの働きと合わせてむくみの解消に役立つ。

●美容分野での機能性
食とは関係ないが、アーティチョークの新しい分野として、葉に含まれる苦み成分である「シナロピクリン」に肌のメラニン色素の働きを抑える美白効果や毛穴を目立たなくする働きがあることがわかってきた。メラニン細胞の増加抑制や肌の弾力低下、表皮の肥厚といった光老化全般にも効果が期待できそうで、さまざまな美容関係用品ではアーティチョークエキスを使ったものも見受けられる。このシナロピクリンは、DNAの情報をRNAにコピーするときに働く転写因子のNF-κB(なおκはギリシャ文字の「カッパ」で、アルファベットの「ケー」ではないので注意)というたんぱく質複合体の働きを抑制するという報告がある。このNF-κBの働きを抑制することで紫外線による肌老化の予防に有効だ。私たちの肌は紫外線などで強い刺激を受け続けると、NF-kB(Nuclear Factor-Kappa Bが活発に働きメラニン色素の元となるメラノサイトを増やして炎症を引き起こしてしまいうわけだ。それが表皮を角化させたり、色素沈着、肌の弾力低下を引き起こす原因となっている。このNF-kBの活発化をシナロピクリンが抑制することで従来のメラニン色素の発生を抑えるという美白作用と同じ働きにつながるとの報告がある。例えばヒアルロン酸やコラーゲンのように、分子量が数万から数百万と言う高分子の場合は、皮膚に塗っても表面に留まるだけで浸透するのが困難とされる。それに比べるとシナロピクリンは分子量が約346と言う低分子だ。特に外用で効果があるという論文は見つからなかったが、皮膚に浸透する限界と言われている分子量500より小さいため、化粧品に配合することで外用としての効果も期待できるかもしれない。

<ハーブティーの活用>


アーティチョークの葉を使用するティーは、肝機能強化やコレステロール抑制など、多くの機能性を有するメディカルハーブティーですが、実際に飲まれた方ならお分かりでしょうが、かなり苦いティーです。食前に飲むと良いので、ぜひ疲れやすい方、お酒を多く飲まれる方には、ぜひ飲酒前にちょっと1っ葉位飲んでおいてもらいたいのですが、いかんせん、苦味がネックとなります。そんな時は、マスキング手法を使って、少しでも苦味を抑える飲み方を推奨します。フェンネルやカルダモンなどのスパイシーなハーブやスパイスとブレンドすると苦みが和らぎ飲みやすくなります。またペパーミントのような冷涼感も苦みを抑えるのに役立ちます。ぜひ試してください。


参考図書
「The Green Pharmacy James A Duke著
「The complete New Herbal Richard Mabey著」
「Botanical Safety Handbook 2nd edittion アメリカハーブ製品協会(AHPA)編集」
「メディカルハーブの辞典 林真一郎編集」
「ハーブの安全性ガイド Chris D. Meletis著」
「薬用ハーブの機能研究 CMPジャパン(株)編集」
「Fifty Plants that changed the course of History Bill Laws著」
「ケルトの植物」Wolf‐Dieter Storl (原著)

データベース
Proceedings of the National Academy of Sciences
健康食品データベース 第一出版 Pharmacist’s Letter/Prescriber’s Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳
米国国立医学図書館 PubMed®


最新情報
2019年3月 (独)国立健康・栄養研究所素材情報データベースが更新されました。

●「チョウセンアザミ、アーティチョーク」有効性:消化系・肝臓 (190312)
・非アルコール性脂肪性肝疾患患者89名 (試験群49名、平均45.2±11.8歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、の乾燥チョウセンアザミ葉抽出物200 mg×3回/日 (シナリン2 mg×3回/日含有) を8週間摂取させたところ、BMI、腹囲、血清脂質 (総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、トリグリセリド) 、総ビリルビン濃度、尿酸値、収縮期血圧の低下、肝静脈血流の増加、門脈径および肝サイズの縮小、肝機能 (ALT、AST、AST/ALT比、APRI) の改善が認められた。一方、拡張期血圧、抱合型ビリルビン濃度、糖代謝指標 (血糖値、インスリン、HbA1c) に影響は認められなかった (PMID:29520889)
(PMID:29520889) Phytother Res. 2018 Jul;32(7):1382-1387.

 

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