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エキナセア Echinacea
エキナセアは免疫力を高めるハーブとして植物療法において確固たる地位を築いています。
学名:Echinacea angustifolia/purpurea/pallida (エキナセア アングスティフォリア/プルプレア/パリダ)
和名・別名:ムラサキバレンギク パープルコーンフラワー(Purple cone flower)
科名:キク科
使用部位:開花時の地上部,根部
植物分類と歴史
エキナセアは400年もの間、北米の先住民が最も大切にしたハーブで伝染病や毒蛇に咬まれたときなどに用いられてきました。特に歯やのどの痛み、風邪や伝染病の治療にも用いられ、有効成分が含まれる根の部分を噛んだり、ハーブティーとして飲んでいたといわれています。19 世紀のアメリカにおいて、エキナセアはエクレクティック派の医師により活発に治療に用いられました。1870年にはアメリカの町医者H.C.F.マイヤーが始めて治療に使用し、成果を挙げ一躍有名なハーブとなりました。戦後にドイツなどでエキナセアの科学的研究が進み「免疫力を高めるハーブ」として今では広く知られるようになりました。現在では欧米の植物療法において確固たる地位を築いています。
学名の由来はギリシア語でハリネズミを意味するechinos〔エキノース〕が語源とされています。医療用途に用いられるのは薬用とされるエキナセアの種類には、卵形の葉を持つエキナセア・プルプレア、草の丈が最も小さいエキナセア・アングスティフォリア、4~9cmの大きな花を咲かせるエキナセア・パリダの3種に限られています。1870年にアメリカの医者が始めて治療に使用し、成果を挙げ一躍有名なハーブとなりました。
戦後にドイツなどでエキナセアの科学的研究が進み「免疫力を高めるハーブ」として今では広く知られるようになり、風邪やインフルエンザ、カンジタや膀胱炎などの感染症の予防に用いられます。
*エキナセア・プルブレア(Echinacea purpurea)は、エキナセア・パーピュリア、紫コーンフラワー、あるいはパープルコーンフラワーとも呼ばれる種類で、紫色がかった花を開き、ポリサッカライドを含みます。このエキナセアの有用性はドイツで研究開発され、数あるエキナセアの中でも最も優れた効能があるとされています。
*エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia)は、カンサススネイクルートとも呼ばれます。この種類もよく使用されます。このエキナセアは、北米やカナダを中心に古くより使用されてきた種類で、紫色の花とつけ、花粉は黄色、エキナコサイドを豊富に含有します。
*エキナセア・パリダ(Echinacea pallida)はブラックサンプソンとも呼ばれます。アングスティフォリアに似ていますが、花の色はやや青白く、花粉は白色、エキナコサイドを含みます。この種類もよく使用されます。
エキナセアは免疫機能を高め、感染症の予防などに効果があるハーブとして欧米を中心に広く利用されています。日本には1926年頃に渡来し各地で栽培されたようですが、埼玉県寄居町の寄居エキナセアが有名で、蚕の餌であった桑の畑からエキナセアに栽培を変えていった農家も多い。現在では千葉・埼玉を中心に商業ベースで栽培されています。
エキナセアを「万能薬」として使っていたのは、北アメリカに住む、アメリカインディアン (ネイティブ・アメリカン)でした。 彼らは400年前から、歯痛、のどの痛み、カゼ、伝染病の治療薬などに利用してきた。特に歯やのどの痛み、風邪や伝染病の治療にも用いられ、有効成分が含まれる根の部分を噛んだり、ハーブティーとして飲んでいたといわれています。さらに紅斑熱、梅毒、マラリア、ジフテリアなどの感染症の治療薬として使われていたとされます。彼らは、薬草を用いる天才だったようでした。さしずめヨーロッパで言えば、森の民と言われたケルト民族で、植物を使って人の怪我や病気を治した薬草師(ヒーラー)と同じ存在だったのでしょう。各地でシャーマンと呼ばれる人たちが病気を治し、時には、政治や儀式、生活のありとあらゆる分野で彼らの力が使われた。かの卑弥呼も日本でのシャーマンです。
メディスンマンは薬草師
ネイティブ・アメリカンのシャーマン(メディスンマンとも呼ばれる)が使用したハーブにはエキナセア以外にも、皮膚炎や切り傷、関節炎などに万能とされた「ウィッチヘーゼル Hamamelis virginiana(ハマメリスとかアメリカマンサクと呼ばれる)」があります。このハーブは収斂作用で知られ、樹皮を煎じてとったエキスを、出血、腫れ、傷あと、炎症などさまざまなケアに使ってきた。今でもアメリカの薬局では医薬品としてFDAが認可した化粧水が売られているほどです。
メディスンマンは単にハーブの知識だけではなく、感覚的にも精錬されたメディスンマンは、地球という自然とのつながり、また個人の内面の探索も習得しており、それらを欠いて病気になっている人々に再びそのつながりを取り戻させる役割を果たしていました。それには、ハーブを利用した実際的な効能が期待される儀式とともに、メディスンマンの「祈り」も大きな役割を果たしています。ハーブを利用してはいたものの、地球そのもの・自然そのものとコンタクトし、癒し手として人々のガイダンスを行ったのが、メディスンマンでした。まさしくシャーマン(神と対話する人)なのです。
ミネソタ州キャス・レイクのメディスンマン
エキナセアが広く世の中に知られるようになるのは、19世紀末になってからです。
有名な話ですが、1870年代、ネブラスカ州パウニー市の医師メイヤー(H.C.Meyer)が先住民からエキナセアの有用性を学んだのが始まりといわれています。その効果を証明するために、自らの身体を毒蛇にかませ独自の製剤「Meyerの血液浄化剤」 を使って治療をしたといいます。その薬効は医療関係者にも広く知られるようになり、20世紀初頭にはアメリカの医者が最も良く購入する薬草にまでなっていきます。その後医学会から注目されるようになると、その効果から瞬く間に現在アメリカで「ナチュロパシー・ドクター」と呼ばれるようになるエクレクティック派(自然療法と化学療法を取り入れた療法を行う医師たち)の間で広がっていったのです。現在では全米で定番ハーブサプリのひとつとしてのぼりつめていきました。
並行してエキナセアがヨーロッパで知られるようになったのは1895年頃で、ドイツの科学者が自国へ持ち帰り、ヨーロッパでの栽培が始まってからです。その後ミュンヘン大学などが中心になって臨床研究を実施し、ネイティブ・アメリカンが経験的に使っていた風邪やインフルエンザなど感染症の予防と治療、抗菌性などが明らかになっていきました。今では気管支炎、尿路感染症、疝痛、浮腫、鼻粘膜の乾燥、アレルギーなどに対する作用、免疫力賦活作用、抗バクテリア、抗ウイルス作用(抗生物質作用)、抗炎症作用などが認知されています。1929年にフレミングがペニシリンを発見し、抗生物質が治療の中心になっていくにつれ、アメリカ医学の世界では影に隠れていくのですが、ドイツ国内では現在に至るまで長く使用されており、国内では尿路感染症や風邪などの自然療法薬として、食用のエキナセアハーブが政府の認可を受けています。実際にエキナセアの効果・効能に対する研究のほとんどはドイツで行われており、原産国であるアメリカ以上に高く評価されています。
*コミッションEでは、purpurea種の開花期の地上部とpallida種の根部を承認ハーブ(approved herbs)として収載している。また英国ハーブ薬局方(BHP)でも、angustifolia種が収載されている。植物医薬品は品種やエキスの抽出法によって効果が大きく異なるため、ドイツでは成分含有量の厳格な規格化が行われているが、エキナセアについても1990年代に規格化の検討が開始され、97年には一連の検討結果が公表されている。最近の研究ではロスマリン酸同様、ヒアルロニダーゼ(健康な組織と病原菌の境目を崩してしまう酵素)の形成を阻害するなど、ウイルスなどの外敵を弱める効果があるらしい。まさに体の戦う力を守るハーブといえる。
*ドイツ保健省が全ての医薬品の安全性と効果を評価・承認するために設けられた16の専門委員会の1つ。1978年に設立。コミッションEは、植物性の生薬と医薬品製剤を担当
植物は人間という運び屋を使って、新大陸からヨーロッパ大陸へその子孫を伝えていったのかもしれない。
成分ほか
エキナコシド、シナリン、多糖類、アルキミアミド(イソブチルアミド)、精油、ピロリジジンアルカロイド(微量)
安全性および相互作用基準
安全性:クラス1:適切に使用する場合、安全に摂取できるもの
相互作用:クラスA :臨床的に関連のある相互作用が予測されないハーブ
(Botanical Safety Handbook 2nd edition アメリカハーブ製品協会(AHPA)収載)
注意事項:キク科の植物なのでキクアレルギーの人は注意が必要です。
その他:使用部位として英国ハーブ薬局方では、Echinacea angustifoliaの根、ドイツCEMではEchinacea purpureaの地上部を承認している。ドイツCEMは、Echinacea Purpureaにつき8週間以内の内服(チンキなど)としています。
学術データ(食経験/機能性)
エキナセアは、発見されてからの歴史は浅いハーブではあるが、その研究範囲は多岐にわたり、特にドイツでの研究報告が多く存在する。含有成分の分析も早くから行われており、今日では、エキナセアの有効成分として多糖類(フコガラクトキシログルカン、アラビノガラクタンなど)、アルキルアミド(エキナシン、エキノロン)、フラボノイド(ケルセチン、ケンフェロール)、カフェ酸誘導体(エキナコシド、シナリン、シコリック酸など)が同定されている。特に免疫促進剤としての可能性に焦点を当てた成分研究では、ミュンヘン大学薬学部のH・ワグナーらによって、エキナセアに含まれるフコガラクトキシログルカンと酸性アラビノガラクタンなどの多糖が、好中球やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、免疫応答物質として知られるインターロイキンなどの産生を促進することが報告されている。それ以外にも食物繊維のイヌリンなども含まれます。
*チコリック酸(chicoric acid)はE. purpureaに、エキナコサイド(echinacoside)はE. angustifoliaとE. pallidaに特有の成分である。またシナリン(cynarin)はE. angustifoliaに特有な成分とされている。
*E. purpureaよりフコガラクトキシログルカン(fucogalactoxyloglucan)と酸性アラビノガラクタン(acidic arabinogalactan)が単離されている
免疫賦活作用や抗菌、抗ウイルス作用、それに創傷治癒作用を有するため、適応としてはかぜやインフルエンザなどの上気道感染症や膀胱炎・尿道炎などの泌尿器系の感染症、それにヘルペスやカンジダ症、治りにくい傷などに用いられます。エキナセアに含有されるフコガラクトキシログルカンや酸性アラビノガラクタンなどの多糖類は、好中球やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、ウイルス感染と闘うインターロイキンなどの免疫応答物質の産生を促します。なお米国ではエキナセアとゴールデンシール(Hydrastis canadensis)の根茎とのブレンドが繁用されていますが、わが国ではゴールデンシールの根茎は医薬品扱いであるため、入手することはできません。
●免疫賦活(風邪の予防など)や感染症予防
エキナセアの有効成分や作用メカニズムは未だ解明されていない部分が多いが、最も有効と考えられているのが多糖です。これらの多糖は強力に好中球やマクロファージなどの食細胞を活性化し、抗菌および抗ウイルス作用を有することが報告されています。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22131823)
またマクロファージからの免疫応答物質であるインターロイキン(IL-1)の産生を促進することが報告されている。(Beuscher N. et al., Planta Medica,55660 (1989))さらにインターロイキン(IL-1)の産生を促進する効果によりリステリア菌(Lysteria monocytogenes)やカンジダ菌(Candida albicans)による全身性感染症への疾患を防止する効果(Roester J. et al., Int.J.Immnopharmacol. 13931 (1991))、インフルエンザ、ヘルペス等の抗ウイルス作用も報告されている(Waker A. et al., Planta Medica ,3389 (1978))。この他にE. angustifoliaのアルキルアミドには抗炎症作用が確認されている(Barbara Muller-Jakic et al., Planta Medica ,6037 (1994))。エキナセアはヨーロッパではごく一般的なハーブのため、感染症や皮膚疾患、風邪などに、薬剤や他のハーブと組み合わせて、抗生物質の量を減らす目的などに使用される。単独の製剤による臨床試験は意外に少ないが、風邪やインフルエンザに対する抵抗性を確認した報告がなされているハーブだ。アメリカでも食品安全および応用栄養センター、米国食品医薬品局などはエキナセア(purpurea)が主に上気道感染症を治療し、免疫機能を高めるのに効果的であると発表している。そのほか、抗炎症、抗腫瘍などで、アメリカ(NIH)、ドイツ(ミュンヘン大学)、カナダ等で、NK細胞との関連性も示唆される報告も出ているようだ。また皮膚科学の分野においても、エキナセアのスキンケア効果の研究も進んでいて、皮膚のバリア機能を回復させ、抗炎症作用をもたらし、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する可能性についても議論されている。メンタルヘルスの分野でも抗不安作用が示唆されている。アメリカでは、ADD(注意欠陥障害)やADHDなどの自然療法薬としても使用されており、これらの症状に悩まされる人が羅漢する確率の高い、不安障害、うつ病、社会恐怖症などの症状も軽減できる可能性があることも示されています。
風邪のときは、ビタミンCを多く含むローズヒップや利尿作用をもつエルダーフラワーなどとのブレンドがおすすめです。また傷をいやす作用も期待でき、軟膏やチンキなど様々な製剤に利用されています。
安全性と相互作用
キク科の植物なのでキクアレルギーの人は注意が必要です。使用部位として英国ハーブ薬局方では、Echinacea angustifoliaの根、ドイツCEMではEchinacea purpureaの地上部を承認している。ドイツCEMは、Echinacea Purpureaにつき8週間以内の内服(チンキなど)としています。
風邪の予防のためにエキナセアを摂取する場合は、2週間続けた後に、1週間休むというサイクルを繰り返すと効果的だと考えられています。
●サプリメント事情
エキナセアはドイツで最も人気のあるメディカルハーブとして、280種類を超える関連製品が作られている。標準化エキスやチンキ製剤は風邪やインフルエンザ、感染症の緩和と予防に、また細胞の免疫力を促進し安定させる非特異的免疫作用促進剤として感染症の治療にも使われている。軟膏は、傷やただれ、湿疹や火傷、日焼けなど炎症性の皮膚疾患に良く使われている。原産国アメリカでも人気も高く、ハーブ市場では風邪予防や免疫力向上に有効なハーブとして売り上げ上位を維持している。特に2013年にはアメリカにおけるエキナセアの売上規模が初めて60億ドル(約6600億円)にも達し、改めてその有用性が広く認知されてきているようだ。わが国でもメディカルハーブとしての地歩を固めてきており、1997年にはミュンヘン大学薬学部のH・ワグナー氏が来日し、日本薬学会で特別講演を行っている。使用量としては、感染症の予防や慢性的な感染症の治療の場合、体重65キロを目安とした大人で、エキナセアの乾燥根なら1日当たり2~3グラム、アルコール抽出液で3~5ml、標準抽出物の場合は、300~600mgが目安。また、急性感染症にかかった時は1日当たり4~6g、アルコール抽出液の場合は、3~9ml、標準抽出物の場合は、600~900mgを摂ると効果的とされる。これはあくまでアメリカのナチュロパシーレシピなので、サプリメントの場合は、当然表示量厳守でお願いしたい。
●サプリメントの禁忌事項および相互作用
風邪の予防のためにエキナセアのサプリメントなどを摂取する場合は、2週間続けた後に1週間休むというサイクルを繰り返すと効果的だと考えられている。
また、ドイツのコミッションEでは、エキナセアを8週間以上連続で摂り続けないように警告していて、これはエキナセアを長期間摂取し続けると、エキナセアの効果が薄れてくる可能性があるためとされる。
また、結核や白血病、膠原(こうげん)病、AIDS、自己免疫疾患などの患者の場合、免疫機能が低下する恐れがあるため、エキナセアの摂取は避ける必要がある。ドイツ保健省植物性医薬品委員会(コミッションE)では内服での禁忌として、結核や白血病、膠原病、多発性硬化症、AIDS、HIV感染、自己免疫疾患などの進行性疾患への使用は避ける必要があるとしている。また作用機序的に免疫抑制剤との相互作用の可能性が示唆され、肝薬物代謝酵素CYP1A2に影響するとの報告があり、CYP1A2で代謝される薬剤との併用には、念のため注意を要する。となっている。それから、エキナセアはキク科に属する植物のため、キクにアレルギーを持つ人は注意が必要とされる。たまに日本人でもキク科アレルギーの人は見かけるので、気をつけたい。
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